最初に見かけたのは2ヶ月くらい前だったと思う。

高1の新学期が始まったばかりで、俺も高校仕様の真新しい制服を着ていた。

俺たちの高校は、家から1時間ほどかかる都内にある。

その日、早起きが得意な俺は、いつものように早めに家を出て電車を待ち、ドア付近の場所をキープしていた。

発車ベルが鳴り、ドアが閉まろうとした瞬間だった。



「まって~~~~~っっっ!」



すごい叫び声とともに、女の子が飛び込んできた。間一髪、そんな感じでぎりぎり電車に乗った彼女は、ドアに挟まれた制服のスカートを一生懸命引っ張って抜きながら、



「はぁー」



とため息をついていた。よっぽど急いで走ったのか、頬は上気し、額は汗で濡れていて・・・・



正直、綺麗だな、と思った。



俺はその娘から、目が離せないでいた。

女の子にしてはかなり背が高いほうで、187cmある俺の目線くらいまであったから・・・175cmくらい?だと思う。

背筋が伸びた長身の身体は細く、長い黒髪は背中くらいまであり、天パなのか、ゆるやかにウェーブがかかっていた。髪を染めてもいないし、化粧もしてないみたいだし、いまどき珍しい感じだ。

印象的なのは、色の薄い瞳だった。二重でぱっちりした目に、ハシバミ色の瞳。全体的に整って、パッと見冷たい印象も与える顔立ちだが、表情がある丸い瞳がそれを和らげていた。



彼女の姿にどのくらい見惚れていたんだろう。

そんな俺の視線には全く気付かない様子で、その娘は吊革につかまり、窓の外を眺めたままだった。



 それが、俺と彼女の、というか、俺が一方的に彼女を見た、出会いの日、だった。