キサラギは少しだけ目を見張り、次いで、すっと目を細めた。

それから、差し出していた方の手をソファの背もたれにつき、もう片方の手を、わたしの頬へと添えた。


「……あんまり可愛いことを言うと、私の理性が飛びますよ?」

「…い、いいわよ、別に…!」


ちょっとだけ我に帰り始めるわたしは、恥ずかしさのあまり、キサラギから目を逸らす。

…顔が近付く。

キスなんてしたことがない。

一生懸命、強く目を瞑るわたし。

影が近付いてくるのが瞼越しにわかり――……




「…っきゃっ!」





……――背中と足に手を回されたかと思うと、軽々と体が宙に浮いた。

驚愕しすぎて目を見開くわたしの瞳に映ったのは、キサラギに抱っこされている、自分の足。


これは…巷で噂の…!