身を引こうとしたわたしを、けれどキサラギの瞳がそれを許してはくれない。

彼は言う。




「…あなたを、守るためです」




澄んだ瞳の色が、すぐそこにある。

混じり気のない、真意の言葉。

吐息がかかり、驚いて身を引いたわたしを、キサラギが笑う。

なんてセリフを吐くのかしら、この執事は。

ドギマギしているわたしの心臓。

でも、キサラギは知らない風な顔で立ち上がり、わたしの隣へと歩いてきて、手を差し出す。


「さぁ、お嬢様。そろそろ時間です。お帰りになられた方が…」




もう、魔法のような時間は、終わりだとあなたは言う。



街のイルミネーションは夢だと言う。

わたしとあなたが、こうして境界線を越えようとしていることを、夢、だと。





「……嫌よ」