「…昼間から、気にはなっていたのです。お嬢様を見る、誰かの視線がある、と」


キサラギの話から、昼間のあのキサラギの不審な行動は、これのことだったのかと理解した。


「すぐにわかりました。お嬢様を人質に取り、すべてを奪おうとしているものの殺気だと。
もう少し気を配るべきでした。……申し訳ありませんでした」


突然の謝罪に、わたしは一瞬驚いて固まった。

でも、すぐに気を取り直し、首を振った。


「謝ることなんてないわ。だって、あなたが守ってくれたから」


優しく言ってみたつもりだけど、顔の上がらない、たまに弱気になるその執事。

わたしは小さく息を吐き、キサラギの顔を覗き込むようにして腰を折った。


「ねぇ、あなたはどうしてあんなに強いの?ビックリしたわ。まさかキサラギに戦闘の能力があるなんて」

「それは…」


徐々に顔を上げ、キサラギはわたしの目を見る。

自分から顔を近づけたことを、ここで悔いた。


……キサラギとの距離が、近い。