手袋を両方外してから、それを裏ポケットに入れるキサラギを、呆然と見上げるわたし。

そんなわたしの耳に、パトカーのサイレンが聞こえてきた。

結構近い。

すると、キサラギは突然わたしの手を取った。


「お嬢様!走ってください!今警察に見つかると厄介です!」


呆けていたわたしは、その声で我に返る。


「えっあ、うん!」


さっきまでとは打って変わって、焦りを見せるキサラギ。


周りの人々の視線が背中に刺さる。

サイレンの音が近づいてくる。


だけどそれすら、すべてをすり抜けるように。


キサラギに手を引かれながら、聖夜の下、駆けて行く。


わたしは走りながら、小さく笑った。



キサラギ、あなたはね?




きっと、わたしのナイトよ。