「……ううん、いいの。今日は我慢するわ」
「どうしてですか?お嬢様にしては珍しいですね」
驚いたように瞬きするキサラギに、わたしは目を泳がせつつ。
「……いいのよ、別に。こうやって夢見たクリスマスを送れてるんだから。
クリスマスプレゼントは…あなたがくれたこの時間だけで、十分だわ」
あぁ…なんてキザなセリフ!
キサラギを見る勇気もなく、足下のイルミネーションに照らされる雪を見つめる。
すると、頭上から、キサラギの小さな笑い声が聞こえた。
反射的に顔を上げるわたし。
「なっなんで笑うのよ!」
ムキになるわたしに、けれどキサラギは、いつもの余裕な笑顔。
「なんだか、今日は素直ですね、お嬢様」
「……たったまにはいいでしょ!たまには!」
「素直なお嬢様は可愛いですよ」
「……だっ黙りなさいそこの執事!!」
キッと怒って先立って歩いていこうとするわたし。
後ろから聞こえてくるのは、
「…私も、今この時間が、最高のプレゼントです」
…なんて、エセ紳士のキザなセリフ。


