ドアノブから手を離し、わたしへと体を向ける。

次いで、顔を近づけて言う。


「ここから連れ出してあげましょう。…ただし、」


キサラギは人差し指をわたしの口元に当てて、




「ご主人様には内緒ですよ?





――あなたと居られなくなってしまう」






なんて、魅惑的な声色で言うから。


ねぇ、キサラギ、気づいてる?

今、あなた、わたしのことを、“お嬢様”って言わなかったわよ。


キサラギがわたしの手を取る。