「……お嬢様、そんな顔をしていると、せっかくの綺麗なお姿が台無しですよ?」

「きっキサラギ!」


突然背後から声をかけられて、驚きのあまり軽く飛び上がってしまった。

慌てて振り向くと、そこには黒い燕尾服を纏ったキサラギが居て、髪の毛も少しだけセットされているから昼とは違う人みたい。


きっと心臓が跳ねたのは気のせいだわ。


「…あ、あなたねぇ…部屋に入る時はノックをしなさいよ!」

「しましたよ?何度も。返事がないので、倒れているのか、もしくは逃げ出したのかと心配になって入らせてもらいました。
心配の必要もなかったようですけどね」


そう言って、また小首を傾げて笑うキサラギ。

……あなたが紳士的なのはわかってるわ。


エセ紳士だってね!


「うるさいわね!顔の体操をしてただけよ!パーティのためにね!」

「おや、それは感心ですね。お嬢様として、とても素敵な心がけです。ですが、口の端を指で引っ張ると、口が裂けてしまいますよ?」


……しっかり見てましたのね!?