男は嬉しそうに

その女と交換した時計をはめると

「ありがとうだす」

と頭を下げて席を離れた。

 私はすぐその女の隣に座り直し、

 「今の男がカミサンですか」

と訊くと、

 「はあ?」
とその女は
不思議そうな顔をして私の顔を見た。

 「じゃあ、何故、時計を交換したんですか」

と私が訊くと、

 「彼にも話したように、この時計は素晴らしく、
そして凄く高い時計ですよ。
ベルトさえ取り替えれば、
私の時計とは
月とすっぽんですよ」

と女は笑って答えた。

 私は
その時計のブランド名を聞いたが
ブレゲとかいう変な名であった。

 結局、
その臭い男が
カミサンだったか否かはいまだ謎である。


 小説の神様を見習って
ここでやめようかと思ったが、
 これでは
 あまりにも気の毒なので、
次に真実を書くこととする。