私はイヤでイヤでしょうがなかったが、

我慢した。

 すると
 
 「この時計いくらしたんだすか」

と値段を訊いてきた。

 こんな質問をしてきた時点で、

この男はカミサンに違いないと確信したので

 「実はこれは貰い物ですので、
値段はちょっとわかりません」

と答えた。

 すると男は
 
「要するにただだすな」

と呟くと、
 
 自分がしている

ぼろぼろのクロ皮ベルトの古くさい時計をとりはずして

 「ただなら、交換してくれだす」

ともっとずうずうしいことを言いだした。

 私は迷っていた。

 すると、

 隣にいた男が
 「チャンスですよ。交換してあげなさい」

と小声でまた口を出してきた。