夏休み頃、ナツには同級生の彼氏がいた。

結局、その彼氏とは何もしないまま終わったことは知っていたけど。

まさかキスもしていなかったなんて。


「……言ったでしょ? 友達の延長で付き合ってたって。友達とキスなんて出来なかったのよ」

恥ずかしそうに、目をそらすナツ。

その仕草、可愛すぎだろ。

なんてことを考えながら、俺の口角は自然と上がっていった。


“友達とキスなんて出来なかったのよ”

ナツははっきりとそう言った。

それなら、キスした俺のことは、ちゃんと男として見てくれているってことで。

友達や幼なじみの延長として見ていないってことだから。

俺はにやけているであろう、口元をナツに見られないように手で隠した。