「あのっ…さっきの…どういう意味ですか?…そして此処は……一体なに?」
何か大事なことを知っているかのようにただ静かに舞い続ける霧を見渡し、私は尋ねた。
ふと彼女の目が真剣になり、私の視線を捕らえる。
「此処は…」
彼女の口から零れる言葉に全神経を集中させる。
「…………審判の心房よ。」
「審判の…し…しんぼう…?」
キョトンとした私に苦笑いを浮かべながら、彼女は言葉を補う。
「…まぁ…簡単に言うと…審判が下されるのを待つ部屋のことね。」
「え…?審判を…待つ…?」
訳が分からず、笑ってあしらってしまいたかったが、彼女の苦笑いが妙に深刻味を帯びていて、それを許さなかった。
未だ困惑した表情を浮かべる私に、彼女は軽く灰色の煙を吐き出し、少し悲しげに言葉を続けた。
「…いい?此処はね、
人間が、死んだ後に一番最初に来る場所なのよ。」


