混乱した頭を必死に働かそうとするけど、それすらもかなわない。
顔面が蒼白しているのが自分でも分かった。
ふと隣に佇む女性に視線を戻す。
やっぱりどう見ても彼女は白い霧の上に浮かんでいる。
どんなに目を懲らしたって、彼女の足元を支える物は存在していない。
なのに彼女は平然とした顔で私を見ている。
なんで…?
なんで…?
震える唇から必死に言葉を紡ぎ出した。
「ど…して…浮いてるの……?」
私がそう言うと、彼女は小さく笑った。
「…貴方も浮いてるけど…?」
え…?
何言って…
「ーーーーっ!!!」
私は言葉を失った。
言葉どころか全神経の感覚が吹っ飛んでしまったみたいだった。
「う…そ……なんで……!?」
私の身体も彼女と同じように白い霧の上に浮かんでいた。
彼女を揺らすリズムと少し違うリズムで、白い霧は優しく私を揺らしていた。
「なっ…なっ……!」
自らの身体に起こっている現象に言葉が出てこない。
慌てふためく私なんかお構いなしに、ゆったりゆったりと周囲を流れる風。
なにこれ…
ど…どうなってるの…?
もう一度周囲を見渡す。
見渡せど見渡せど…
白い…霧…
「此処は……此処は一体……っっ」
縋るように彼女の目を見つめた。


