「……俺……無理……してたかな……」


「え…?」


「千夏が……さっき言ってたから……俺って…そんなに…無理してた…?」


私はゆっくりと誠さんの肩に寄り掛かった。


「うん……さっきも……それと…私が病院で目を覚ました時も…それから…」


「そんなに…?」


誠さんは少し驚いた顔で私を見る。

私は小さく笑った。



「…いつも…千夏は無理しなくていいって言いながら……誠さんが…一番無理してた……」


そう言って、誠さんの顔を見上げた。


誠さんは、参ったな~と言うように苦笑いを浮かべてそっと私の肩を抱き寄せ、そしてしばらく黙り込んだ。





「………そうかもしれないな……」


空洞の中に、誠さんの声が小さく響く。


「……お前を苦しめないように……何も覚えてないことで…お前が苦しまなくてもいいように…って気を遣ってたのが……逆に千夏を…苦しめてたのかもしれないな……」


「そっ…それは違うよ!?」


「千夏…?」


「……」


ぶつかった視線からつい目をそらす。

そして小さく息を吸い込み、もう一度誠さんの目を見据えた。



「私が……何も覚えてない私が傷付かないように優しくしてくれたのは………私…すごくすごく嬉しかった……本当に…本当に救われたの…!」


「千夏……」


誠さんは優しく微笑むと、いつもみたいにまたくしゃっと私の頭を撫でた。


貴方の優しさがあって…痛いくらいの優しさがあって…私は今此処にいるの。

こんなにも幸せな気持ちを知ったの。

こんなにも温かいものを知ったの。



そして…千夏さんだって…



「そういや…知り合ったばっかの時も…俺に救われた……なんて言ってたな…お前……」





--いじめに遭っててね…でも…彼が救ってくれたの--