私はグッと息を飲んで、誠さんの腕を掴む。


「誠さんっ…無理して…無理して明るくなんてしないでよ……!」


「………何言ってんだよ別に俺は」

「無理してるよ!!」



自嘲的に放たれる誠さんの言葉を制する。




「…誠さん…辛いときいつも無理して明るく振る舞おうとする…」


誠さんは大きく息を吸い込むと、溜息混じりに言う。


「……そんなことないって…無理なんかしてないから…」


「ううん…無理…してるよ…。辛い時は辛いって…悔しい時は悔しいって言ってよ!私だって…私だって誠さんの支えにっ」

「何が分かんだよっ!」

「……っ!」



振り向き様に荒げられた声に、思わず身体がすくむ…。

私はゆっくりと誠さんの腕を掴んでいた手を離した。



誠さんはまた私から目をそらして俯く。





「…っ…千夏に…何が分かんだよ……」


「……」



怖くて…心臓がドクドクと音を立てる。

身体が小さく震え出しているのが自分でも分かった。


誠さんが怒っているのが怖いんじゃない。


彼に、見捨てられてしまうのが怖かった。



私はただ…いつも自分の感情を押し殺して千夏さんを優先させてきた貴方が

やっと最近本当の気持ちを見せてくれるようになったから…


だから…



「まこ…」

「前の千夏なら……そんなこと言わなかったのに」