「……どんな…想い出があるの……?」


私はただ海を見ながら呟いた。


「え…?」


誠さんはふと隣にいる私に視線を向ける。

私はそれに気付いたけど、海を見つめたままで言葉を零した。


「この海……私と…どんな想い出があるの……?」


誠さんはゆっくりと正面に広がる海へと視線を戻す。


「…想い出…か…」




--『前の記憶のこと聞いて…辛くない…?』--





誠さんが私にもうそれを確認しなかったのは、私の表情を見て分かったからだと思う。

昔のことに関係なく、今の千夏さんが私が誠さんを愛していると、伝わったからだと思う。

誠さんは海を見つめたまま、少し恥ずかしそうに苦笑いしながら言った。



「…俺が……お前に告白した場所……」


「誠さんが…私に…?」


「まだ…高校生の時かなー…絶対俺が傍にいて守ってやるからって……ったく…ガキが何言ってんだかな…」





『貴方くらいの時にいじめに遭っててね』

『地獄だった』

『でもね彼が救ってくれたの』





千夏さん……

誠さんの存在に…誠さんの気持ちに…

どれだけ貴方は救われたことだろう…。



そう思うと、また胸が熱くなって涙が溢れた…。

誠さんはふと私の方を振り向いて、呆れたように笑う。



「…今日はよく泣くなぁー…」



そう言いながら私の頬を伝う涙を優しく拭ってくれる。



「…でも…あの時も…こうしてお前…泣いてたな……」



誠さんの切ない表情が、私の胸を強く打つ…。