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誠さんの車に乗るのは、これで二度目だ。



病室よりも、部屋よりも狭い部屋で二人きり。

ふと生じる甘い感覚に最初はあんなに戸惑った。

けれど今はそれを、少しだけ穏やかに受け入れられる気がしていた。



「よーっしゃ!行くぞー!!」


「おー!!」


「…な、なんか気合い入ってんなぁ、千夏」


ハンドルに手をかけたままキョトンと目を見開いている。


「だっ…だって夜の海とかすごい楽しみ!」


「…そか!」


向けられる笑顔に、私も笑顔を返す。




自分の気持ちを伝えたからからだろうか。

自分の気持ちを素直に認めたからだろうか。

それとも

許されなくてもいいと覚悟を決めたからだろうか。




私は誠さんが好き。




その揺るがない事実があるというだけで、何故か強くなれた気がした。