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全然眠れない。

さっきまで抱きしめていてくれた…肩を抱いてくれていた…

すぐそこにあった温もりがないことが、寂しくて…何処か不思議でたまらなかった。


すぐ近くにあるはずのバスルーム。

同じ家の中にいるのに、部屋を隔てる薄い壁がとても大きく感じる。

何度寝返りを打っても、心が泣き止んでくれない。




枕元に座るうさぎのぬいぐるみを手にすると、UFOキャッチャーの前で無邪気にはしゃぐ誠さんの顔が頭をよぎった。


あの時はまだ好きだなんて…

ううん…もしかしたら好きになってたのかもしれない。


罪悪感のせいにして気付かないふりしてた。


なのに今は…


雨の中で切なげに見つめる熱い瞳を思い出す。

抱きしめる腕の強さを思い出す。


私を閉じ込める広い胸を…思い出す…。


誠さんの温もりを知ってしまっただけで、私はすごく弱虫になってしまった。


一度覚えた温もりは…なかなか私の熱を冷まさない…





カチャ

バスルームのドアが開く音が聞こえて、誠さんの足音が小さく響く。




薄い壁一枚を隔てたリビングに感じる存在に、自分でも驚くほどに安堵していた。