「南音ちゃんか、よろしくね」

「南音でいいよ!」

いい子だな。良かった、秀のファン

とかじゃなくて。

「あ、私今日具合悪いから保健室で

休んでく。もう授業始まっちゃうし

二人は戻って」

二人には感謝してるけど今はどうしても

一人になりたかった。

「え、でも」

「そうだね、私達は戻るよ♪」

何か言いたげな陸を南音は引っ張って

行った。

ありがとう。

気遣ってくれたんだね。

保健室には鍵がかかっていて私は

職員室に行こうとした。

「鈴音!」

誰かに呼び止められて振り返る。

そこに立っていたのは、走ってきた

のか息があがっている秀だった。

「・・・」

言いたいことはたくさんある。

言わなきゃいけないことが。

それなのに私の口は開こうとしない。

ただ言葉の代わりに涙が頬を伝う。

「鈴音・・・」

私の大好きな秀の声。

誰よりも落ち着くずっと一緒にいたいと

思った人。

彼の少し低い声が私を呼んでいる。

それでも私はなんにも反応出来なくて

今までの秀との思い出が蘇る。

やっぱり、

「む・・り・・・」

涙でぐちゃぐちゃになった顔。

のどが震えちゃって途切れる声。

秀を一人残して私は走った。