抱き締められてる彼からは、一切の体温を感じない。


「真帆子にもう一度合えて良かった……」


耳元で囁く彼。


「……溶けてるよ」


私の体温で、どんどん溶けていく彼の体。


「うん」


制服の上に羽織っているコートは彼が溶けた水で濡れていく。






11年前の雪の日、小さかった私は、大きな雪だるまを作った。


二段に重ねるのはお母さんやお兄ちゃんに手伝ってもらい、


とても大きな雪だるまを作ったのだ。




しかし、日に日に溶けて小さくなる雪だるま。


最後はべちゃべちゃになって、


鼻であったニンジンや、目やボタンであった石、手の変わりの枝などを残して消えた。







彼がにっこりと笑った。


そして、跡形もなく消えた。


「……」


最後に見た彼の笑顔は、やはりあの時の雪だるまにそっくりだった。