ゆっくりと男を見上げる。

身長差は25センチ程。
真っ黒な学ランに足元には真っ黒なゴツイブーツ、黒いTシャツ。
首まで見上げてそれ以上見上げる勇気もわかない。目えお合わせるのが恐い。

全身真っ黒・・・。

「別に変なもんなんて入ってねーよ。ほら。」

ぐいっと差し出された水。
恐る恐る手に取る。

ふるふると震える手には力が入らず、ペットボトルのふたさえも捻れない程の非力さ。

「貸せ。」

渡された水は奪い取られ苦闘した蓋を簡単に開けた。
また、手元に帰って来たそれを半分ほど飲み干して一息ついた。

ふ~。生き返る。

水を飲み終えても目の前に立っている男の顔は未だに見れていない。
ビクビクとどうしていいのかわからないまま、きょろきょろと視線を泳がせていた。

「ふっ。猫みてーだな。」

そう言うと、ポンと頭の上に手を置いてソファに戻って行った。
どうしていいのかわからず、男の後を着いていった。

男の座ったソファの下にペタンと座り込み、男を見上げて聞いてみた。

「あ・あの・・・ここ、どこ・・・??」

見上げた顔には見覚えがなく、切れ長の二重の目、大きくも小さくもない真っ黒な目。整った顔立ちに真っ黒な少し長めの髪。

和風な色使いの顔なのに、洋風な雰囲気がある。

きれいな人だな~・・・。