ここは香蘭学院の学長室。
少し頭の薄くなった優しそうなおじさんはさっきから額に汗をかきしどろもどろに説明をしてくれる。
“特例の転校生”
素性はなるべく隠して欲しい、など。
その他教科書や各教科の担当、担任、副担任の紹介。
副学院長、教頭・・・。
全員がしどろもどろ、生徒相手には丁寧すぎる口調で説明と自己紹介をしていく。
中には半分泣き声で接する教科担任すらいる。
「それでですね・・・あのっ・・・」
学院長が額の汗を真っ白なハンカチで拭きながら説明を続けてくれる。
「えっとではクラスの説明を・・・。」
「あ、ちょっとすみません。」
急に声を発した私に学院長、先生方の方がビクついた。
「あ、はい、な・なんでしょうか?・・・」
「あ、いえ。先生方にではなくて・・・。みんな教室に行ってて??」
そう。
先生方が丁寧に扱っていたのは私ではなく、私を取り囲むようにして座る5人の事。
しかも、完全に威嚇した状態で。
「ネコ一人に出来ないよ~。」
「そーそー。俺らは授業受ける必要とかないし~??」
春季くんと秋季くんが私の座るソファの後ろから私を覗き込んで言う。
「でもね、説明位は一人でも大丈夫だし・・・。それに・・・狭い。」
普段は来客用として使われている高そうな革のソファ。
普通に座れば大人3人用ほどの物に、真ん中に私、右隣が響くん、左隣は日和くん、肘掛に腰掛けた鈴くん、背もたれに腰掛けた秋季くん春季くん・・・。
「・・・・分かった。行くぞ。」
日和くんが私の隣からすっと立ち上がりそれに続いてみんな出て行った。
ほーっとため息をついたのは残された私を除く全員だった。