鈴が俺の方を見ながら、何かを聞いてくる。

“何も聞かないのか?”

鈴の目はそう俺に話しかけている。

クールに見えて、根が優しい鈴はネコの事が心配なんだろう。

そりゃそうだ。
手にも足にも拘束の後がうっすらと付いている。

傷の手当をする時に鈴が発見したその痕はひどく目立つものではないにしろ、長年の拘束が伺えるようなものだった。

「おまえ・・・。」

俺の声に反応してビクつく肩。

ほっせー肩だな。
腕も、首も、腹も・・・横から見たらペラペラじゃねーかよ。

鈴に視線を戻すと
“今はやめとこう。”
そう目で話しかけてくる。

「いや、良い。なんでもね。」

あくびを噛み殺して立ち上がる。

さすがに2日まともに寝てねーとしんどいな・・・。

ベッドに寝転がると急に襲ってくる睡魔。

こっちを恐る恐るという感じで振り向くネコは、やっぱり猫そのもので笑いが出る。


響にネコの身の回りの指示を出して、寝る事にした。


ほんの、気まぐれだ。

2日間徹夜で看病した事も、かくまってやる事も、ただの、気まぐれ。

あくびを1つし、横になる。

「日和。」

「あん??」

鈴に話しかけられて体を起こすと、そこには俺と鈴以外誰も居なかった。

「全員で行かなくてもいいと思うんだけどな。」

「気に入ったんだろ。ペットみてーじゃん。あの子。」