「あっ!!それっ!!」

思わず奪い取った自分のバッグ。
よくみるブランドのボストンバッグ。

「別に盗ったりしねーよ。」

鈴くんが頭の上でそう言いまたもとの位置に座った。
よく喋っていた響くんもビックリした顔でこっちを見ている。

凄く、失礼な事をしたと思う・・・。
けど、そんな事もちゃんと考えれない位に大事な物なの。

ぎゅっと鞄を握り締めると革越しに伝わってくる感触。

「おまえ・・・。」

黒髪の男に急に話しかけられビクつく。
恐る恐る黒髪の顔を見上げる。

「いや、良い。なんでもねぇ。」

そういうとすくっと立ち上がりベッドの方に歩いて行った。
ベッドのきしむ音がして少し振り返って見ると黒髪が寝転がってこっちを見ていた。

見ていた事を咎められたわけでもないのに、急いで入り口の方に向き直った。

「わりぃ、ちょっと寝る。そいつ、居るもの準備させろよ。」

「りょうかーいっ。じゃ、ネコ、いこっか♪」

そういって差し出された響くんの手を簡単に取ったのは、響くんの人柄のせいなのか、それとも私の心情からなのか。

よくも知りもしない人を簡単に信用して、頼りたくなる。

そこまでに心が疲れてた。