「里菜ぁ!次、ひろくんだっけー?」

中林博忠先生=ひろくん。

このあだ名は、既に定着していた。

ウチの学校の生徒なら、
誰にでも分かる、
簡単な等式だ。

「うん。そうだよー。」

あれ以来初めての授業だ。つまり、あのプリントが使われる。

━━━どうなったかな?





キーンコーン
    カーンコーン…





「きりーつ」

「れーい」

「「お願いしまーす」」



「では、今日から三角比に入りまーす!」

sinθ、cosθ、tanθ。

先生は、ひとしきり説明を終えた。

私には、先生が授業を進めるテンポが、とても心地よい。

…みんなには、
「先生はやいー」
「分かんなーい」
なんて言われているが、
それは人それぞれだ。
…仕方ない。



「じゃあ皆には、実際に問題を解いてもらいます!」

先生は、プリントを配りながらそう言った。