真っ暗な空に少しだけ星が光っていた。


『ねぇ………』


「ん?」


携帯を耳に当てたまま、星を仰ぐ。

俺は、そんな沙良をみつめる。


『二人して休もうか。』


「あぁ、休もうぜ。」


星が瞳の中に落ちてきて、キラキラ光っていた。

光った瞳が優しく俺をみつめる。


「俺んちで良いよな。」


『薬、ある?』


「ないけど………俺はいる。」


『花束は?』


「それもないけど……沙良がいる。」


沙良の瞳が静かにまぶたを閉じた。

直ぐに開けられたその瞳の中にあるのは……俺。


「歩く?」


「風邪悪化するよ?」


携帯から離れた言葉が俺の心をくすぐる。


「じゃ、めっちゃ看病してもらえるじゃん。」


「ばぁか。」


言いながらゆっくり胸元に埋められた沙良の温もり。


「ごめんな。」


いろんなことに。


「めっちゃ看病する。」


背中に回された沙良の指がぎゅっとジャケットを握り締めた。

だから、俺も安心して沙良を抱き締める。