トシキは

押入れの奥から

注射器と

腕を縛るゴムの管

そして

小さなビニールの

パッケに入った

白い粉を

取り出した



その粉を

水によく溶かして

注射器の針で吸い上げ

右腕をゴム管で縛る




針を天に向け

空気をゆっくり

押し出す



すぐに針の先から

白濁した液体が溢れだす




トシキは

一瞬だけ

歯をくいしばり

浮き出た

血管に

針を通す




すぐに

右腕の血管から

全身へ向けて

快感が広がっていく



普段なら

不安や恐怖などの

感情はすべて

すぐにクスリがもたらす

安堵と快楽の波に

押し流されていくのだが

この日は

少し違った