トシキは

別のジーンズに着替えて

ユニクロで買った

黒いパーカーに

袖を通した。



ふと考える。



横井さんに

こうやって呼び出されるのは

もう何回目だよ・・・。



いつも

あの人の呼び出しは

突然だ。



もう勘弁してくださいって

いつも言いたいけど

どうしても言えない。



今夜だって

バイトで疲れてんだし

できれば行きたくねえ。




どうせまた

いつもと同じように

俺に待機させてて

いざとなったら

「キレ」んのを

期待してんだろうけど。



今夜はたまたま

既にさっき

「キレ」てしまったばっかだし。



他人にはわかんねえだろうけど

あれは本当につらい。



自分が何をしてるか

記憶がなくなるのって

マジ不安だし。



いつも「キレ」た後は

自分のことが怖くて

信用できなくなる。



だけど

断れねえ。



あぁ、15分後って言ったのに

もう10分も過ぎてしまった。



さっさと行かないと

最近横井さん

以前にもまして

怒りっぽいし。



トシキは最近めったに着ていない

ライダースのレザージャケットを

クローゼットから引っぱり出し

パーカーの上にはおって

アパートの外へ出た。