「はい・・・。」



つばを飲み込んで

目の前のことに集中する。



「あっ・・・、でもこのマンション中から扉開けてもらわないと入れないんじゃ?」



「あたりめえだ。それくらいわかってるっての。」

横井が

少し怒ったような

口調で返答する。



ピンポーン



深夜の呼び出し音は

必要以上に

ひびきわたるような気がした。



「はい・・・」

インターホンから女の声が聞こえた。



深夜だからか

かなり怪しんでいるような声だ。



「横井だ。」

とそれだけを言うと

エントランスの扉が開いた。



青野とトシキに目くばせで

入れと指示をする横井。



「女は今まだ仕事じゃない・・・んですか?」

思いついた疑問をなげかけてみる。



「バーカ。今のが坂口の部屋なわけねえだろ。このマンションに住んでる別の水商売の女だよ。事前に話はつけてあんだよ。」



なるほど

とトシキは変なところで

感心してしまった。



横井は

「シュンちゃん」は

昔っから抜け目がなかった。



どんなことでも

段取りも準備もうまくて

なんなく切り抜けていた。



それはやっぱり

変わっていないんだなと

トシキは思った。