しかし

そんなトシキに目もくれず

横井と青野は

さっさと喫茶店を出て歩いていく。



雨は小降りになっていたが

二人とも傘は持っていなかった。



10分も歩かないうちに

目的地に着いた。



目の前にあるのは

真っ黒な

高層マンションだった。



トシキは

思わず見上げた。



何階建てなのか

パッと見ただけでは到底わからない。



「なかなかすげえマンションだろ?」

横井がトシキに声をかける。



「うん・・・、いや、はい・・・。」



「女は高級クラブのホステスだ。かなり稼いでるみたいだな。そんな女がなんであんなチンケな野郎に惚れこんでかくまってんのかよくわかんねえよ。」



「・・・・・。」



何も言わず建物の頂上をぽかんと見上げていた

トシキの肩を横井が叩いた。



「ほら、仕事だ。」

低いトーンの厳しい声だった。



横井と青野の表情が

一気に張りつめたものに変わった。