私は慌てて、桂木の手を避けた。さっきの恐怖感は吹っ飛び今度はドキドキ感が止まらない。それを見た桂木は申し訳なさそうに私に謝った。私は落ち着き、
「私の方こそ、ごめん。今までアイツと付き合ってて、振られたときにあんな怖い目を見られたときどうして良いか分からなくて・・」と、ドキドキ感がありつつもさっきのことを思い出すと、自然と涙目になりそうな状態になる。
それを見る桂木は何も言わずに、私を優しく抱きしめた。
「え?ちょ、ちょっと?」
「何か、あったら守るよ・・・心配する必要はないから」
その言葉で、私は更に涙が出て、しまいには繁華街の往来でありながら大泣きしてしまった。桂木はなおも優しく、抱きしめて髪をなでたりしている。
数分経った頃、私は幾分落ち着き、上を見ると、桂木は真っ直ぐな方向を見つめていた。桂木は視線を私に落とした。
「・・ジュース買ってこようか?」
静かに首を縦に振る私。その場を離れ、近くの自販機にジュースを2本買ってきた。
「好きなジュース聞くの忘れてた。だから、適当だけどいい?」
「うん」
桂木から渡されたのは、小さめのリンゴジュースだった。それを開け、飲む。次第に頭がすっきりし始めた。はぁ~とため息をつく私。今日で何回目だろう・・。私を見る桂木に、
「今日は、もう帰ろうか。いろいろあって疲れただろうし」
と言った。それに応える私だが、思い出したことがあった。
「ねぇ、桂木君が買いたい物あったよね。いいの?寄らなくても」
「ああ~また今度買うよ。別に今、必要って訳じゃ無いし。それに・・明日は学年研修だから準備しないと・・。すっかり忘れてたな・・」
「あ~!!そうだった!!やば!!ごめん、付き合わせて」
「いいよ。また明日、学校でね」
桂木と別れ、家路につく私。ついたときは夜7時前だった。