「あんた、謹慎くらってるんでしょ。何でここにいるの?」
私は、動転したように拓真に聞く。
「ああ?俺が何処に行こうか勝手じゃネーか」
威圧的な目で私を見る拓真。私は助けを求めるかのように桂木の手をギュっと握る。桂木はそれに気づいたのか、ちらっと見た。
「ねぇ~拓真。早く行こうよ~。こんなチビ女どーでもいいし。もしかして拓真が言ってた、昔の女ってコイツ?そら、こんなの見たら拓真も別れたくなるって」
拓真の隣にいる女はあざ笑っている。ムカッと来たが言ってることは確かだ。でも、ここまで言う必要は無い。
「チッ!テメーも相変わらずだな。俺がちょっと苛ついただけで怯えるような目をしやがって。だから、嫌いなんだよ」
怯える私に桂木は、拓真に言い寄った。
「あ?テメー確か、桂木だったな。なんか用か?もしかして、お前、コイツの女か?マジ、笑えるわ」
無言のまま拓真の目を見る桂木。
「遊んでていいの?先生に見つかるよ。割とここ、巡回してるみたいだし」
「は!言いたいことはそれだけか?見つかって退学か?上等じゃねーか!」
「じゃ、君のお父さんにここにいるよって電話しようか」
その言葉に拓真は固まった。額から若干、汗が出ている。隣の女は不機嫌な顔をしている。
「な、なんでテメーが親父の番号知ってるんだ?」
「学校が休みの時とか説教聞きに行ってるから」
そう言うと、桂木は携帯を取り出し、カチカチと操作をし始める。拓真は慌てて、桂木の手を掴む。さっきとは打って変わって慌ててる状態だ。
「もしもし?あ、月原君のお父さんですか。お久しぶりです。桂木です」
「ちょっと待て!」
「何?もしかして、怖いの?」
「怖くは・・ねぇよ!つか、普通、親呼ぶとかありえねぇだろ!クソが!行こうぜ、亜紀(あき)」
亜紀と呼ばれた女は拓真と一緒にどこかへと行ってしまった。
「大丈夫だった?よほど、怖かったんだね。手、ずっと握ってたみたいだし」
「え?あ、ご、ごめん。痛かったよね?」
私は慌てて、桂木の手を解く。桂木は首を横に振り、その顔を見た私は安堵感に包まれ、やがて涙がぽろぽろ出始めた。桂木は私の泣いてる顔をそっと手をやり、人差し指で涙をそっと払った。私は慌てて、桂木の手を避けた。