私たちは、ミラーハウスの中に入った。

もちろん、はぐれないようにと、手を繋いで。

爽は手を引いてくれた。

「わぁ…すごいね。」

「ホント。どっちがどっちだか分かんないね。」

私は、いくつもの爽の姿に囲まれて、顔が赤くなっている私に気が付き、少しうつむいた。

「なんか…」

爽が、口を開いた。








「この世界には、僕ら二人しかいないみたいだね。」







ゴンッ

その瞬間、前方を歩いていたにも関わらずこっちを振り返っていた爽は、ミラーにぶつかった。

「そ、爽ッ!?大丈夫ッ!?」
私は相当焦っていたことだろう。

「痛たた……ははっ、ミラーに嫉妬されちゃったのかも。」

「赤くなってる!!冷やさなきゃ…!!」

せっかく爽がくれた言葉に、その時はときめく事さえ忘れていた。

「大丈夫、大丈夫。あ、ほら、向こう、出口みたいだよ。」