「だって、水に色なんてないもん」

「それは」

そうだけど……。

「でも、水を色で表す時、水色を使わない?」

幼稚園や小学生の頃、描いた絵の中の水は、どれも水色だった。

「私、思うんだあ。水色って名前をつけた人は、この水じゃなくて」

喉が渇いていたのか、すくった水を飲む彼女。

「みずみずしい空のことが言いたかったんじゃないのかなあって」

口元を拭った彼女の髪が少し水に濡れている。
彼女が顔を上げるとポタッと落ちて、地面から色が滲み出た。

私もつられて顔をあげる。

みずみずしい空の中にはもこもこの雲があって。鳩が一羽、飛んでいった。

「みず(みずしい空の)色……」

思わず呟く。