シルバーブラッド 眠らぬ夜に

「でも、ちょう結びなら、あなたは自分でほどけるじゃない。

きっと、冗談のつもりだったのよ」

 ティーカップに、指を絡める。

「ちょう結びはね、オレの顔の、すぐ下にあったんだ。

ぐるぐる巻きにされて、手の自由は無いのに、目の前に助かる道がある。

こういう状況って、気が狂いそうになるんだよ」

 彼女の表情は、凍りついた。

その時、浩之が狂ってしまったんだとでも言いたいように、彼を見ている。



 そう思われても構わないけど。


実際そのせいで、精神の一部は死んでしまったんだと思う。

それ以来、目の前にある現実がブラウン管を通して見ているようにしか、感じられなくなってしまったんだから。