シルバーブラッド 眠らぬ夜に

助かった。

と思うべきなのだ。

でも、あまりに男の行動が不可解で、解せなかった。

 浩之はしばらく座り込んだまま、遠ざかっていく男の影を見送った。

 それから、指先で胸ポケットを探ってみた。

紙の感触に触れた。

ひとさし指と中指でそれをつまみだした。

真っ黒な紙が出てきた。

明るいところでよく見ようと立ち上がりかけて、驚いた。

驚いたついでにおかしくなって、短く笑った。

腰が抜けている。