「兄貴じゃん。生きてたんだ」

何の感情もこもらない、軽い声。

それで、この間に存在するハズの長い年月を、あっさりと飛び越えてやる。

裏腹に、心拍数は異常なほどに上がる。

植え付けられている、英樹に対する恐怖心が、理性まで食おうとしている。

浩之は、それを押さえ込んで、表面上の自分と切り離した。

呼吸を整える。

心臓が、慌てふためくのをやめて、ゆっくりと力強く脈打ち始める。