浩之の中には、常に、現実との隔たりを作る何かがあるのだから。

自分の心が現実に直接触れられないように、そこに薄い膜がある。

それを飛び越えられない限り、人ともっと親密に付き合うことなんか出来ないと思った。

「やっぱりオレは、誰にも興味ない」

 諦めてつぶやいた。

「うそ。

もったいない。

本社でもおまえのこといいって言ってる子結構いるのに」

 浩之は苦く笑った。