迷わずキルテに飛び付く少女たち。お目当てはキルテの白銀の髪の毛だ。

「ねぇねぇ!この髪ってホントにホンモノ?スッゴく綺麗!!」

「お兄ちゃん、お兄ちゃんなのに髪長いね!なんでここだけ赤色なのー?」

「わぁー!寄るなッ!!!引っ張んなあぁッー!!」


「キルテー、起きたかー?」

 開けっ放しの部屋の扉からエークが顔を覗かせる。

「あっ!エーク!何なんだ?!こいつら!!」

 キルテは必死になって少女たちを引き剥がそうとしていた。しかし剥がすつもりが、少女たちは余計に引っ付いてくる。

「なにって、ここの宿の娘さんたちだよ。それより俺、ちょっと宿の手伝いしてくる」

「はぁ?!」

「王国から逃げてきている人たちでいっぱいなのに、無理言って泊めてもらったんだ。手伝うのが当たり前だろ?

じゃあ、セツカちゃん セツナちゃん、キルテをよろしくね」

「「はーい☆」」

「“じゃあ”じゃねぇー!!早くたすけ…」


――…バタン。

 キルテの想いは届く事はなく、エークは扉を閉めて行ってしまった。

「「ねぇねぇお兄ちゃん!髪の毛結ばせてー♪」」

 キルテはガクッと肩を落とした。