「――であるからして、我ら戦場の民は日々の鍛錬を怠る事は許されないのだ。そして――」


 窓が無く、蝋燭の灯りが点っているだけのホールでは、その中心にある円台で族長の男が大きな声で演説を行なっている。

その話を遮るように、重い木の扉が音をたてて開くと、キルテたちがホールに入ってきた。

「遅いじゃないかー。何やってたんだ?」

 族長は直ぐにキルテを見つけると、変わらず大きな声で訊く。

「……」

「すみません、俺が寝坊したもので」

族長は明らかにキルテに訊いていたのだろうが、キルテは答えるどころかそっぽを向いたので、代わりにエークが答えた。

「エークが寝坊?それはまた珍しいな…まぁ、丁度いいか。長い演説はこれくらいにして、今日は皆に知らせたい事がある」


 族長は懐から手紙を出すと、後ろ方にも見えるように高く上げた。

「…これは王国の国王様の手紙だ。内容を簡単に言うと、王国にドラゴンが現れたらしい」