「もういいよっ……」
あたしはプイッと顔を背けた。
「ま、待てって、正直に話すから…」
するとすぐにそんな声が聞こえて、あたしは今度は慌てて話し出そうとする耀太の口元に手を押し付けた。
「いい!言わなくていい。
だけど……ひとつだけ教えて?」
理由はわかりきっているけど、それを素直に受け入れられるほど、あたしはまだ大人じゃないから。
でも、ひとつだけどうしても気になることがある。
「……ん?」
そんなあたしにまだ口を押さえ付けられてる耀太は、戸惑った表情を浮かべながらも首を傾げた。
「ここに、バナナに来たのは初めてかどうかだけ……」
あの伝説がホントにここなら、例え耀太がこういう場所が初めてじゃなくても、せめてここだけは初めてであって欲しいから……
耀太と一生一緒に居られるのは、あたしだけじゃなきゃヤだから……
あたしの気持ちが伝わったのか、口を押さえた手に温かい息がフッと掛かる。
そして……
「当たり前だ、じゃなきゃあんなに最初驚かねぇだろ。
それに、俺が一生一緒に居たいのは楓だけなんだから……」
あたしの手をそっと外した耀太は、そう言ってあたしの指にチュッとキスを落とした。
その指は左手の薬指で………
「……っ…耀太ぁ…!」
あたしは堪らなくなって目の前の大きな胸にしがみついた。
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