「さて……」





耀太の手がくしゃっとあたしの頭を撫でる。






「この後どうすっかなぁ……  俺ん家行く?」



「なんで?今日はこのままお泊まりするはずじゃ……」





ここまで来て、なんでいきなりそんなこと言うの……!?





戸惑うあたしが見上げると、頭を撫でていた指がそのまま目元まで降りてきて、






「……さっきまでワンワン泣いてたくせに?
いいよ、無理しなくて。
っつうか、ウチに泊まればいいじゃん?」






睫毛に残っていた雫を拭って優しく頬笑みかけてくれる耀太。





「でも合い鍵が……」






それでもあたしが渋ると、耀太はニヤリと笑ってあたしの手をとった。





「おばさんには悪いけど……チェーンはめるか……」



「そっか、その手があったね。
……あ、でもダメだよ」



「なんで?」



「だって瑞穂と約束したんだもん。あそこに行って来るって」





ここから100mほど先に見えるネオン街を指差すと、今度はやれやれって顔でため息をついている。





そして念を押すように言った。





「俺は別にいいけど、ホントに大丈夫か?」



「うんっ!だから行こっ!」





逆に手を引っ張るあたしにちょっと呆れた顔をしながらも、説得を諦めたのか耀太もゆっくりと歩き出す。





徐々に人がまばらになっていく道を進むと、やがて目がチカチカするほど妖しいラブホ群の前へと辿り着いた。





この中で目指すのは……あった!





視線の先では、ライトアップされてこの前よりもはるかに目立つバナナの木のイミテーションが、風にそよそよ揺らいでいる。





ここだって知ったら、耀太はどんなリアクションするかな……?






少しだけワクワクしながら、あたしは耀太の手をグイッと引っ張った。






いざっ!“そんなバナナ!?”へ!みたいな?(笑)







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