「あ、あのさ……」
微妙な空気の中、先に口を開いたのは、少しだけ難しい顔をしている耀太だった。
「な、なに?」
「い、いや……、一応言っておこうかと……」
「な、なにを?」
いちいち言葉に詰まるあたし達。
周りから見たら、かなり滑稽な会話だと思う。
だけど、本人達はいたって真面目なんだからしょうがない。
あたしがオドオドとした視線を送る先で、空になった缶をしばらく右手に左手にと移動させていた耀太だけど、意を決したようにそれをクシャリと潰して再び顔を上げた。
「ホントは黙ってようと思ってたんだけどさ、実は昨日、おかんから小包が届いたんだ……」
「おばさんから……?
……ま、まさか、手紙っ!?」
母親からあんな手紙を渡されたんだもん、ざっくばらんなおばさんならきっと−−−
“楓ちゃんとHする可からず”
的な、もっとストレートなメッセージを送り付けてきてもおかしくない。
まさか耀太、『だから今日は帰る』なんて、本気で言い出さないよね……?
再び不安に駆られながら、あたしは知らぬ間に耀太の方へと足を進めていた。
「いや…… 手紙はなかった……」
そんなあたしに、苦笑いを浮かべて呟いた耀太は、少しだけ体をずらして、座るスペースを作ってくれた。
でもその表情は、またもやだんだん固くなっていく。
「ただ……」
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