「じゃあ、こっちの片付けるな……」
食器乾燥機に並べられたままの、お皿を指さす耀太。
こういうところ、あたしにはもったいないくらい、すごく気の利いた彼氏だと思う。
普通、そんなとこに目が行かないよ。
「うん、ありがと。 お皿の位置は適当でいいからね」
耀太の好意に甘えて、自分は食器を洗うことにした。
2人で台所に立つのって、ホントに新婚さんみたいでくすぐったい。
カチャカチャ―――
お皿のぶつかる音を立てながら、しばらく無言で作業をしていると、食器棚の引き出しを開けた耀太が、ん?なんて可愛い声を上げた。
「どうしたの?」
「コレ……“楓へ”って書いてあるぞ」
白い封筒をあたしの顔の前に差し出す耀太。
たしかに、その封筒にはデカデカと“楓へ”と書かれてある。
「あ……忘れてた。 そういえばお母さんが言ってたかも……」
『食器棚の引き出しに、お手紙書いておいたから、読んでね?』
「後で読むから、テーブルにでも置いといて」
「ああ……」
先に食器を片づけ終わった耀太は、リビングのソファーへと座り、冷蔵庫から持っていったビールをプシュッと空けた。
その横顔は、5本目だというのに全く変わりがない。
俗に言う“ザル”
よくあんな苦いモノ呑むよな〜〜
ホント、感心してしまう。
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