「おれ、
あれからもずっとサクラナのことが好きだったんだ。
 でもな、おれはおまえと違って彼女とクラスも違ったし、
話すことさえできなかった。
 でも、彼女を簡単に諦めることはできなかったよ。
 わかるだろ。
 それで、おれ、とうとう、勇気を出したんだ。
 
 たしか、卒業式が終わって2・3日ぐらいしてからかな。

 彼女の所へ電話したんだ。

 『好きです。付き合ってください。』ってな、

 しかし、彼女ははっきり言ったよ。

 『御免。あたし今好きな人いるの。』って。

 そのとき、おれがっかりするというより、
やっぱりなという気持ちが強くてな。

 でも、なぜか、未練たらしく、
『じゃあ、一度だけでいいからデートして欲しい。』
って言ってしまったんだ。」

 このとき、
 吉野は、自分がとんでもない勘違いをしていたことに気づいた。

 だが、それを自分の耳ではっきりと確かめたかった。

 そこで、池田には酷だとは思いながらもそれから先を尋ねた。
 「それから、どうした?」

 「ああ、彼女はしばらく考えていたが、
『一度だけよ。』といってデートを承諾してくれたよ。」

 「それで?」

 「それから一週間ほどして
二人でボーリングに行ったよ。
あの時は最高だったな。」

 「それで?」

 「それだけさ。」
 
池田のその言葉を聞くと吉野はその場で肩を落とした。           
 「おい、どうした?」

 吉野は、そばにあった日本酒をコップについで
一気に飲み干すと、
池田に事の始終を打ち明けた。