夜  話  

そう、語り終えたまま、皎は何かをじっと耐えているかのように、一点を見つめていました。


「…コ…ウ?」


わたしは、そ、と呼び掛けてみました。


その、オニキスのような瞳が、皎の心の中を吹き抜けた嵐によって、凍り付いてしまったかのように思えたのです。


「……え…あ、ぁ。」


ふうぅっと、どこかから引き戻されたかのように、皎の瞳に感情が戻り、そうして、2、3度瞬きをすると、彼は驚いたような表情になりました。


「何故、泣く。」


皎のその言葉で初めて。


わたしは、自分の頬を流れる涙に気付いたのでした。