夜  話  

「部屋が冷えきってしまう前に、ちゃんと窓を閉めるんだよ?」


もういちど、振り返ってわたしに念を押すように言ってから、その人は邪魔したね、と言って部屋を出ていきました。


「心配して下さったのね。
見ず知らずのわたし達なのに、優しい方ね。」


わたしは腕の中へと話しかけます。


けれども、紅珊瑚色の唇はわたしに答える言葉を紡ぐ事はなく。


黒曜石のような瞳はただじっとわたしを見つめているのみでした。


けれども、わたしは知っているのです。


貴方がその沈黙の中にどれほどの言葉を隠しているのかを。