未明から連続していた痛みの波の中で。


わたしの脳裏には、ある映像が強く浮かんでいた事を、わたしは今ゆっくりと思い出していました。


それは朝焼けの色に東の空が染まる頃でした。


西の空に沈みこんでゆく大きな大きな満月の映像をわたしは見ていたのです。


ひと夜の間、暗闇を奥ゆかしく照らして夜の住人達の行動を見守ってくれていた優しい月が、その務めを終えて西の空へと去っていく、その姿を。


その時確かに室内にいたと言うのに、わたしの脳裏には何故だか実際に見ているかのごとくに、はっきりとした月の姿が映し出されていたのでした。