ひゅるり、と駆け抜けていく風には、冴えざえとした氷の刃のような冷たさが含まれていました。


少し、かじかんだ手に吹き掛けたわたしの息が、紺色の夜空を背景に白く浮かび上がります。


見る間に闇の中へ溶け込んでいくその様が少し愉快で。


わたしは、まるで子供のように夜空に向かって白い息を何度も形作ってみていたのでした。


出来上がる度にその形はさまざまに変化し、たちまちの内にふわり、とその姿を消してしまう儚い薄く白い小さな雲を何度も何度も作るわたしを、しゃらしゃらと降り注ぐ月の光が取り巻いていました。