「それ以来、奴は良い薫りのものを好むようになったんだ。」


そう告げながら皎は風を呼んだのでしょう。


わたしの部屋の中を一陣の風が吹き抜け、その勢いに思わず瞳を閉じてしまったわたしの耳に囁きを残して。





皎の姿はまた、かき消したかのように消えてしまっていました。


少しぬるくなってしまったスパイスティーのカップを両手で包むように持ち、わたしは窓から見える月光に照らしだされた雪景色と、煌めく夜空に目をやりました。